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小田倉哲治氏は人懐っこい人でした。初対面の人とでもすぐに打ち解けてしまうような人です。彼がニコニコっと笑うと誰でもつられて一緒に笑ってしまいます。決して人を不愉快にさせるようなことがなく、場を盛り上げ誰か困っている人がいないかさりげなく見渡すことができる彼を悪く言う人はいませんでした。根っからの優しい性格は人に対してだけではなく、犬や猫、観葉植物にまでおよんで、それらの世話を怠りませんでした。それでいて、少し抜けているところがあるのもご愛嬌です。外見がそれほどイケメンではなく、ドラマでいえば主人公のお友達、三枚目の役柄がぴったりのタイプなのもまた親しみやすいというものです。

ある時、誰かが小田倉哲治氏に聞きました。「君は怒ったことがあるのかい?」小田倉哲治氏は大笑いをして「もちろんですよ。僕は案外怒りっぽいんですよ」と答えてまた笑いました。今は優しい男がモテますので小田倉哲治氏も三枚目ながら言い寄る女性が少なくありませんでした。誰もが優しい小田倉哲治氏と一緒になれば自分も優しくしてもらえて幸せになれると考えたのです。しかし、彼女たちは重要なことに気付いていませんでした。

小田倉哲治氏は優しい人間です。何か嫌なことがあっても顔に出したりせずその原因を作った人を責めたりはしません。寛大な心で許すのです。しかし、それができる人はその反面自分に厳しいのです。自分を律することのできる人しか常に他人に優しい人でいることはできません。小田倉哲治氏も間違いなくそのタイプでした。では彼の妻になる人はどうでしょう。もちろん一対一の場合は変わらず優しい人でしょう。しかし、他人が介入した時はそうはいきません。妻は他人ではなく自分と同じ側の人間です。自分に厳しいのと同じように妻にも同様の厳しさを求めることになります。そうでないと彼の夫婦は他人に優しい夫婦にはなれません。妻にも彼と同じ状況を受け入れる覚悟が必要だったのです。

彼はよくモテましたがすぐに結婚することはありませんでした。そしてついに生涯の伴侶となったのはなんとも彼によく似た女性でした。似たもの夫婦とはよく言ったものです。彼の妻もよく人から「あなた、怒ったことあるの?」と聞かれるような人でした。結婚の条件に「優しい人」というセリフはよく聞かれますが、一体誰に対して優しいのかをよく考えた方がよいでしょう。人に優しい彼はやはり人に優しい夫婦になりました。

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